BiSHが所属するWACK事務所社長の渡辺氏の構想では、BiSHの楽曲は「ブルース」にしたいと言うものでした。
渡辺氏がサウンド・プロデューサーの松隈氏に求めたのは90年代のオルタナティブ・ロック・シーンから誕生したバンド、ジョン・スペンサー・エクスプロージョンのイメージ。
ジョン・スペンサー・エクスプロージョンのような楽曲
「ブルースを奏でるアイドル」
この発想はおもしろいです。
もしかすると、アイドル界には、まだブルースを武器にしているアイドル・グループっていないのではないでしょうか?
こんな世の中だから、いるかもしれませんが、少なくともBiSHやBABYMETALばりに有名なアイドル・グループとしては聞いたことがないですね。
ジョンスペみたいな楽曲は得意じゃない
「ジョンスペみたいなのがやりたい!」
BiSHを立ち上げた当初の渡辺社長の構想。
もちろん、渡辺社長が好きなニルヴァーナやスマッシング・パンプキンズみたいな楽曲もやりたいとも言っています。
サウンド・プロデューサーの松隈氏はこのマニアックなオーダーに対して、ゴリゴリのロック好きにも刺さりながら、かつ大衆性を取り入れて多くの人が受け入れられる楽曲作りに挑みました。
ただ、松隈氏が度々言っていたのが「ジョンスペは俺の得意な感じじゃない・・・」と言うもの。
もしかすると、ジョンスペのエッセンスも加えながらBiSHの楽曲となったものもあるかもですが、ジョンスペの独特な世界観はBiSHの楽曲からは感じにくいです。
松隈氏も言っているように、あの曲はジョンスペだからできる曲。
あまりに独特な世界観です。
ブルースを爆発させたバンド「ジョン・スペンサー・エクスプロージョン」
渡辺氏が好きなジョンスペは、ギタリストのジョン・スペンサー氏が91年にニューヨークで結成したバンド。
日本では渡辺氏が言うように「ジョンスペ」と略されることが多いです。
スリーピースのバンドですが、ベースがいないと言うユニークな構成。
低音のギターとリードギターという編成でサウンドを作り出しています。
ジョン氏の奥様はオルタナティブ・ロックで有名なボス・ホグのボーカリストであるクリスティーナ・マルティネス。
ジョン氏はこのバンドでもギターをやっています。
ちなみに彼のギターは奥様の贈り物。
ボス・ホグの方がBiSHに影響を与えてしかるべきバンドのように思います。
はなしをジョンスペに戻します。
ジョンスペのサウンドはブルース・エクスプロージョンだけに根底はブルース。
90年代という時代で「ブルースとパンクの融合」と表現されることも多かったバンドです。
オルタナティブに括られることもありますが、いわゆるニルヴァーナやスマッシング・パンプキンズと比べると、断然、土臭く硬派なブルース・ロックの香りがプンプンする印象です。
日本のブルースでパンクなバンド
日本のバンドで言うと、ジョンスペとも交流のあるギターウルフやミッシェル・ガン・エレファントなんかが近い香りを漂わせてます。
ギターウルフ
ギターウルフに関しては2013年に「ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン VS ギターウルフ」と言う、完全生産限定盤のCDをリリースしています。
なんと言ってもこのアルバム、アートワークがバンドのグラフィック・アートを多く手掛けているロッキン・ジェリー・ビーンの描き下ろし。
これだけでも非常に価値があると思っていたりします。
ジェリー・ビーンに関しては別記事でも紹介させていただいています。
ちなみに、このバンドの旧ベーシストであるUG氏の奥様はえーちゃんの娘である、矢沢洋子。
矢沢洋子奥様はPIGGY BANKSと言うバンドのボーカリストです。
ミッシェル・ガン・エレファント
また、ジョンスぺ同様、オルタナ・ブームの中、1996年にメジャーデビューをしているミッシェル・ガン・エレファントも世界観(匂い)が近いと言えるでしょう。
BiSHの楽曲で言うと、「SMACK baby SMACK」なんかは、アユニとアイナが、ミッシェルガンのボーカルであるチバユウスケ氏を意識して歌っていると言っています。
アユニは特に、当初は松隈氏は彼女のボーカルの扱いに困っていましたが、布袋寅泰っぽく歌わせる指導で、そこから覚醒したと言っていました。
個人的には、このチバ歌唱法のほうがアユニを覚醒させたのではないかと感じています。
因みに、BiSHも披露した、東京スカパラダイスオーケストラのシングル「カナリヤ鳴く空」は、もとはチバユウスケがゲストボーカルとして歌っていました。
BiSHバージョンはこちら↓
まとめ
ズバリ、ジョンスぺっぽい楽曲と言うとBiSHの作品の中では探しにくいです。
しかしBiSH楽曲の魅力は、渡辺氏の90年代オルタナ好きというマニアックな路線とオーダーに対して、松隈氏がそのマニアック性を加味しつつも、万人が受け入れられるように、かつアイドル好きもロック好きすらも魅了するようなサウンドメイキングができることが、最大の強みなのだと思います。
渡辺氏が松隈氏に目を付けた鋭さと、希望するサウンドを誰にでも受けるように生み出す松隈氏の天才具合が何とも言えません。
そして、それに対して必死に答えるBiSHのメンバーの愚直さがあっこそ、爆裂的成長を見せているのだと、改めて感じさせられました。
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