久しぶりにBiSHのインディーズ1stシングル「OTNK」のMVを観ました。
BiSHの人気が出てきて、この曲の紹介も多く使われるようになりました。
その中で、空耳的な注目度はよくされてきましたが、今回はこれまであまり着目されなかった楽曲の方に目を向けたいと思います。
OTNKの発想はエピック・メタル
BiSH 1stシングル「OTNK」
OTNKは、インディーズ時代に唯一出した最初で最後のシングルです。
発売は2015年9月2日。
前月の8月には新メンバーとしてハシヤスメとリンリンが加入、脱退したハグ・ミィ含め、6人体制でレコーディングされたものとなります。
レーベルはavexではなく渡辺氏の立ち上げたインディーズ・レーベルである「SUB TRAX」からのリリースでした。
この「SUB TRAX」も90年代のオルタナティブ・ロック好きならすぐに気付く、シアトルでニルヴァーナ、サウンドガーデン、L7など数多くのオルタナ/グランジ・バンドを輩出したインディーズレーベル「SUB POP」からアイデアを拝借しているに間違いなしです。
この曲で注目されるのは、空耳に聴こえる曲の歌詞。
全編英語かと思いきや、しっかり日本語の歌詞になっているんですね。
マキシマム・ザ・ホルモン的な歌詞の創り方です。
そして、この歌詞のサビ。
「追う鎮火鎮火」がオ○ンコに聞こえるなって話で盛り上がります。
千鳥・大悟に関しては「コ」よりも「ポ」の方が好きだそうです。
そんな歌詞の世界も楽しいですが、今回着目したいのが楽曲の世界。
アイリッシュな世界観を取り入れた「OTNK」
楽器はヴァイオリンがBiSH名曲「オーケストラ」的な使い方ではなく、アイリッシュフィルドと言われるアイルランドで演奏される民族音楽の奏法を用いたり、ティンホイッスルと言われるアイルランドの縦笛を取り入れたりしています。
そこに、根底ではヘヴィなロックサウンドで疾走させていく構成。
こう言った非常に壮大でストーリー性のある構成の音楽は、エピック・メタルと言われるヘヴィ・メタルによく見られます。
OTNKでは、渡辺社長がお気に入りだというドイツのエピック・メタル・バンド「エクリブリウム」のような楽曲をやりたいと言う希望から始まりました。
もっと厳密に言うと、エピックメタルのような曲で叫ばせたい言葉がOTNKだったと言うことです。
エピック・メタルバンド「エクリブリウム」
エピック・メタルとは叙事詩メタル
映像をご覧の通り、渡辺&松隈コンビがやりたかった感じがなんとなく伝わってくると思います。
エピック・メタルの始まりは1980年、アメリカのバンド「マニラ・ロード」のアルバム「Invasion」発売時に、インタビューで彼らが自身の音楽スタイルをエピック・メタルと表現したことからと言われています。
エピック・メタルというのはヘヴィ・メタルのジャンルの一つで、壮大かつヒロイックでドラマティックなサウンドが最大の特徴です。
壮大さというのは弦楽器や民族楽器なんかを取り入れることで、その壮大さを表現する一助になっていると思います。
また、ヒロイックとはなんや?
となるかと思いますが、まずエピックという言葉ですが、日本語では「叙事詩」という意味。
叙事詩というのはなんや?
ということですが、これは歴史や伝説、神話、さらにはそこに登場する英雄の物事を記述したものを言います。
なのでヒロイックというのは英雄的な表現であること、そしてその英雄の歴史的、神話的ストーリーで構成されたドラマティックな音楽の世界観がエピック・メタルなのであります。
映画「ロード・オブ・ザ・リング」の世界観
英雄的なものの具体的な例としてはファンタジー作家のロバート・E・ハワードの「コナン(CONAN)」だったり、J・R・R・トールキンの「指輪物語(The Lord of the Rings)」を想起してもらえるとわかりやすいでしょう。
「コナン」はアーノルド・シュワルツェネッガーのハリウッド・デビュー作「コナン・ザ・グレート」。
「指輪物語」は映画「ロード・オブ・ザ・リング」の世界観です。
ドイツのエクリブリウム
そして、WACK社長渡辺氏のお気に入りのエクリブリウム。
渡辺社長はエクリブリウムをヴァイキング・メタル、アイリッシュ・メタルと表現されていましたが、エクリブリウム自身は彼らの音楽スタイルはエピック・メタルであると位置付けています。
彼らはドイツのバンドでOTNKにも通じる、ヴァイオリンなどのストリングスにフルートや民族楽器などを取り入れて、ドイツの伝統音楽の旋律にのせてヘヴィロックを奏でるという構成。
歌詞もドイツの民族話や神話などを取り入れていますから、まさにエピック・メタルというジャンルそのもの。
デビューは2001年で女性も含めたメンバー構成となっています。
結成当初はリーダーのルネが20歳で最年長。
ヴォーカルのヘルゲが18歳。
ベースのザンドラは15歳で、他のメンバーも10代という若さ。
BiSH的エネルギーも感じます。
基本的にはオリジナルメンバーであるルネが中心となって活動をしており、アルバム制作の際のギター、ベース、キーボードなど全て自分で演奏をしてドラムは打ち込みで仕上げています。
メンバーがイスラエルだったりノルウェーだったりと離れていることも理由のようです。
2019年にはアルバム「レネゲイズ」をリリースしており、こちらはもはやエピック・メタルということでは括れない幅広な楽曲を披露しています。
まあ、ジャンルなんて所詮はマスコミが作ったモノサシと言ってしまえばそれまでですね。
というわけで、BiSHでよく取り上げられる90年代のグランジ/オルタナ・ロックとはまた違った世界観のロックの引用でロック好きオジサンはウキウキするわけです。
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